OFFICE STRATEGYこれからのオフィス戦略

東邦大学看護学部 感染制御学
小林教授に聞く!
職場内での感染を予防する方法
【改訂版】
2021.12.06UPDATE

新型コロナウィルスの感染が始まってから間もなく2 年が経過しようとしておりますが、多くの市民や事業者の感染対策への協力やワクチン接種が進んだことにより、新規感染者の減少が継続している状況です。(2021年12月時点)

今後も1 、2 年は、流行と落ち着き(抑えられた状況)を繰り返すと考えられていますが、流行時には、適切な感染対策を行う必要があります。

そのような中、改めて、重視すべきオフィスでの感染対策について、東邦大学看護学部感染制御学の小林教授にお話を伺いました。

感染対策で最も重要なこと

ワクチン接種が進んできた中で、感染対策で最も重要なことは何でしょうか。

これまで同様、マスクを着用することです。
海外でワクチン接種が進み、マスクをしないで外出する人が増えた結果、感染の再拡大が生じています。新型コロナウイルス感染症は感染者の咳、くしゃみ、会話などの時に排出されるウイルスを含む飛沫またはエアロゾルと呼ばれる更に小さな粒子を吸入するか、感染者から排出されたウイルスが目や鼻、口に直接的に接触することにより感染します。ワクチン接種が進んだ中でも、マスクをし、飛沫を防ぐことが大切です。
また、人と対面での接触をすることは、緩和をしていってもよいと思いますが、その際に、空間に空気の流れを作り、十分な換気をすることがより重要となってきます。

適切な換気として、「窓の開放による方法」「機械換気(空気調和設備、機械換気設備)を使用する方法」があります。

■ 窓の開放による方法

1時間に2回以上換気を行うこと

  • 換気の目安:30分に1回以上、数分間程度、窓を全開にすること
  • 開放する窓は2方向とし、窓が1方向しかない場合には、ドアを開けること

■ 機械換気による方法

1人当たり毎時30m2の換気量を確保すること

  • 必要換気量が足りない場合は、一部屋当たりの在室人数を減らすことで調整すること

オフィスにおける換気の重要性と具体的な換気方法

■オフィスによる換気の重要性

換気は、オフィス内では特に重要です。なぜなら、換気を行わないことにより、ウイルスや菌などによる感染のリスクが上がるだけでなく、業務上においてもあらゆる弊害が生じる恐れがあるためです。

例えば、一酸化炭素濃度や二酸化炭素濃度の上昇により、従業員に頭痛やめまい、眠気、吐き気などの健康被害が生じることが懸念されます。反対に、換気を積極的に実施することで、従業員の健康向上や、生産性の維持と向上にもつながることになります。

オフィスの換気を行う際には、換気効率を意識して行いましょう。

「換気回数」=「部屋の空気が一定の時間に入れ替わる回数」とし、「1時間当たり、換気回数は1回(1回/1h)」の換気効率で換気を行いましょう。つまり、1時間で部屋の空気がすべて入れ替わるようにします。具体的には、先述の通り、窓の開放による換気の場合は「1時間に2回以上」換気を行うことが推奨されています。

■具体的な換気方法

窓が1か所の場合

窓が1か所の場合でも風の「入口」と「出口」を作ることが大切です。室内ドアを開けたり、扇風機を活用することで空気の流れをつくることが可能になります。

窓が2か所の場合

部屋に窓が2か所ある場合は、開ける窓は1か所より2か所の方が良いです。また、部屋の対角線で通風するとさらに効果的です。

専門家が提案する職場内での感染対策の基本

※撮影時のみマスクを外していただきました。


最も重要な対策である換気を含めた、感染を防ぐ4 大対策をご紹介します。

最も重要な感染対策は、空気を滞留させないよう換気を十分に行うことです。また、ウィルスと接触する確率が問題ですので、感染する確率・リスクをいかに減らすかにかかっています。 無症状の人は、症状がみられる人に比べ飛沫に含まれるウィルスの量が少ないと考えられますが、新型コロナウイルス感染症が流行している以上、感染リスクを考え対話には十分な注意が必要です。

オフィスで感染しやすい場所

オフィスで感染がしやすい場所はどこなのでしょうか?

オフィスで感染しやすいのは、マスクを外して会話をする場所、つまり会議室、休憩室、社員食堂、ロッカー室などです。飲食店やライブ会場で感染リスクが高いのは、同様の理由からです。会話を行わないオフィスの執務デスクであれば、隣り合う配置は問題ありません。間仕切りがあれば尚よいですね。
また、マスクをしていても、「長時間の会話」「大きな声」「換気の悪い場所」という条件がある場合は、エアロゾルが発生しやすく、感染しやすい場所といえます。
長時間や大人数での会議が避けられない場合は、オンラインでの実施も検討するとよいでしょう。

■ オフィスのレイアウトで見る感染予防のポイント

どのエリアであっても、換気が十分に行われていることが大切です。

対面のデスク


デスクのつい立てやパーティションを調整する

デスクのつい立てやパーティションは、座高・身長から30cmプラスしたものがあると飛沫を防ぎやすいです。
ですが、必要以上に間仕切りを設置すると、空気の流れを遮断してしまい、換気が十分に行われなくなってしまうため、逆効果となることもあります。

ロッカー室


マスクなしでも2m空いていればOK

換気が十分であれば人と人との間隔が2m空いていれば、通常の会話であればマスクがなくてもOKです。マスクをしているとよりリスクは低減されます。しかし大声を出す、咳、くしゃみは飛沫を発生させるのでNGです。ロッカー室は密室になりやすいため、可能な限り換気を良くし、人数制限や時間制限をつくり、ロッカー室内での会話などの規制、短時間利用を徹底しましょう。

会議室、役員室

  • ・常時換気することが重要

  • ・会議は可能な限り短い時間で

  • ・大声を出すと飛沫が生じるため、マイクを使うことも有効

常時換気ができていれば、会議室での短時間の会話は問題ないでしょう。ただし、扇風機で空気を拡散させるのはNGです。出口に向かって一定方向に空気を出しましょう。出口の空気で感染しないかと質問されることがありますが、感染する確率はほぼありません。

会議室、休憩室


オフィスの人が集まる場所はオープンエリア・常時換気・間仕切りあり

オフィスで打ち合わせや会議、人が集まる場合には、オープンエリアで常時換気ができる状態、かつ話者の間に間仕切りがあるとよいです。

感染予防において効果が見込めないもの

オフィスでもよく触れる場所を消毒すること が定着していますが、物に付着した新型コロナウィルスの生存期間はどのくらいなのでしょうか。
また、物からの感染はあるのでしょうか。

WHOによると新型コロナウイルスは、プラスチックの表面では最大72時間、ボール紙では最大24時間生存するなどとしています。
ただ、物に付着したウィルスに触れてしまったとしても、その手で目や口を触らなければ、感染することはありません。

オフィスだけでなく、飲食店でも机や椅子の座面をふき取り消毒していますが、手が触れないところを消毒してもほとんど意味がありません。

手すりやドアノブ、テーブルなどの消毒にはアルコール消毒薬(70~80%)や市販の塩素系漂白剤の主成分である「次亜塩素酸ナトリウム」が有効です。

その他にも、オフィスで実施されている感染予防のうち、おすすめできないものや、逆に予防につながらないものはありますか。

△ 靴底の消毒や鞄専用ロッカーの設置

環境からの感染は確率が低いです。新型コロナウイルスは飛沫感染によるリスクが高いため、靴底の消毒や靴専用ロッカーなどを設置してもほとんど意味がありません。

△ 透明のロールスクリーン

効果が見込めない理由として、ロールスクリーンの下や側面に隙間があると意味が無く、また、ロールスクリーン自体の消毒やふき取りが徹底できていないと、ウィルスが残ってしまい、逆にリスクが高まるという点があります。さらに、空気の流れを遮ってしまうことで、エアロゾルが滞留したり、換気が十分にできなかったりすると、逆に感染のリスクが高まってしまいます。

△ 植栽で間仕切りをする

植栽で間仕切りをしても、飛沫を防ぐことにはなりません。ただ、距離を取るという意味では有効です。

△ 床の高さを変えて、他者と目線が交わらないようにする

飛沫は上から下に移動するので、目線を変えても意味がありません。

△ 通路を一方通行にして接触を減らす

混み合っている場所であれば有効ですが、オフィスですれ違うくらいであれば、感染のリスクは少なく特に行う必要はないでしょう。

感染しにくいオフィスに必要な条件

オフィス内は常に衛生的に保ち、感染を起こさない、広げない対策が必要になります。では具体的にどんなことが必要になるのか、みていきましょう。

1.厚生労働省による「働き方の新しいスタイル」

まずは国が定める新しいオフィスの在り方から条件を考察します。厚生労働省からは、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例が公表されており、(4)に「働き方の新しいスタイル」として右の5つが明示されています。

テレワークや時差通勤などを利用し、できるだけオフィスに人が集まらないワークスタイルを中心として、オフィスの在り方も新しい様式が求められています。

出典:厚生労働省『「新しい生活様式」の実践例』

オフィスは「ひろびろと」使うことが勧められており、各オフィスで工夫をして対応する必要があります。オンライン会議が浸透していますが、音漏れやプライバシーの観点で支障が生じるため、オフィス内ではフォンブースや個室などを用意し、オンライン会議環境を整えることが有効です。

また、オフィスにおける感染対策強化のために作成された「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」には、後日、冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法についてのチェック項目を追加されるなど、換気の重要性について提示されています。

「冬場における『換気の悪い密閉空間』を改善するための換気の方法」の資料では、推奨される換気の方法として、窓の開放による方法と機械換気による方法がそれぞれ詳しく解説されています。

チェックリストや資料を参照しながら、適切にオフィスの感染症対策を行っていく必要があります。

出典:厚生労働省「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」

出典:厚生労働省「冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法」

2.日本渡航医学会と日本産業衛生学会による
「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」

日本渡航医学会と日本産業衛生学会が策定した「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」の2021年5月28日更新版には、職域に必要な感染対策について提示されています。

●職域の感染予防の基本
職域の感染予防の基本として(1)健康観察、(2)常時のマスク着用、(3)手指衛生の励行、(4)「3つの密」の回避の4つを掲げています。(4)については、3つの密にならないような環境整備・行動制限を促すほか、昼休み含む業務時間外においても感染リスクが高まる「5つの場面」を避けることが促されています。5つの場面のうち、オフィスに関係するのは、場面5の「居場所の切り替わり」で、仕事での休憩時間に入った時など、居場所が切り替わると、気の緩みや環境の変化により、感染リスクが高まることがあることが指摘されています。

●環境対策
環境対策では、事業所における窓の開放及び機械換気による換気や、事業所の機器や備品に対して消毒を行い感染予防に役立てることを推奨しています。

●従業員の行動変容
従業員の行動変容については、主に物理的距離を保つことで感染予防を行う「ソーシャルディスタンス」が掲げられており、具体的には事務所やオフィスにおける執務中、人と人の間隔をできるだけ2m以上に保てるような座席配置、もしくは隣の人との間にアクリル板を設置すること、会議や研修を含む対面での業務を制限し、Web会議等を積極的に利用すること、社外からの訪問者(来客、宅急便、郵便、昼食等の配達など)を必要最小限に制限することが示されています。
また、食堂内の「3つの密」を避けるために利用人数や利用時間の制限、テーブル上のアクリル板等の設置、食事中の会話を控える(いわゆる黙食)、利用者間の距離(できれば2m)の確保、アルコールによる食事後のテーブルの消毒、これら実施が困難な場合は食堂の閉鎖も検討すること、弁当を持参して自席で静かに喫食することも推奨されています。

●フリーアドレス導入時の管理
フリーアドレス導入の際には、感染者が発生した際に接触者のトレースが難しくなる恐れがあることから、「行動履歴の記録」と「備品や機器の消毒」を行って管理することが望ましいとされています。

出典:日本渡航医学会・日本産業衛生学会「職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド」(第5版(修正済))

まとめ

オフィスにおける、職場内クラスターを防ぐための換気の重要性と具体的な方法、専門家の解説による職場内での感染対策の基本、オフィスレイアウトから見る感染予防のポイントをご紹介しました。しばらくはテレワークと出社が並行して行われるのが想定されます。職場内クラスターを徹底的に予防するためのオフィスづくりは、会社の存続そのものに関わるのはもちろん、業務効率、生産性などにも関わってくることです。今回有効と示された換気をはじめとした感染予防策を徹底すると同時に、有効で最善のレイアウトを実現することが重要です。

監修者
小林 寅喆 (コバヤシ インテツ)
東邦大学看護学部 感染制御学 教授


北里大学衛生科学学院 卒業、保健学博士
三菱化学メディエンス 検査部長 兼 化学療法研究部長、
東海大学医学部 非常勤講師、国立国際医療センター 非常勤研究員、
東邦大学医学部看護学科 感染制御学 教授、
東邦大学大学院医学研究科 教授 を経て、
現在 東邦大学看護学部 感染制御学 教授、大学院 看護学研究科 教授

感染症や院内感染対策など感染制御学を専門とした研究・教育に携わる。

・文部科学省専門調査員(ライフサイエンス)
・上田泰記念感染症・化学療法研究奨励賞(日本化学療法学会)受賞
・日本歯科医師会 新型インフルエンザ対策ワーキングチーム 委員
など 論文、著書多数

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